多様性・ダイバーシティを敢えて認めないという選択肢
経営コンサルをしていると、結局企業の悩みを突き詰めていくと「殆どが人間関係」でしかないことが多い。そして、人間関係が本当に良好な会社は少ない。
新規事業に取り組むにしても、DXを進めるにしても、採用を強化するにしても、売上を増やすにしても、社員の満足度を上げるにしても「人間関係」がとどのつまりになることが多い。
例えば、従業員の満足度を上げるために「配偶者やお子さんの誕生日休暇を導入しよう」という提案に対し「確かに良いと思いますが、独身の社員やお子さんのいない社員との不平等感をどうしましょうか」「独身の人は対象を恋人、子がいない人は親にしたらいいじゃないですか?」「あ、でもそうなると恋人がいない人や親がいない人もいますよね」こういった公平性を求める観点から結局何も進まないことが多い。
大企業では無理であるが、30人以下の中小企業なら「社員全員が既婚者子持ち」が働きやすい会社ですという宣言やブランディングをしたらどうだろうか?と考えた。
そうなれば、「配偶者やお子さんの誕生日休暇を導入しよう」という提案もスムーズに進み、従業員の満足度にも繋がる。
企業は何(どんな事業)をするかも重要であるが、誰(社員)が働きやすい会社なのかを明確にブランディングしていくことが必要なのではないだろうか。
「ただでさえ、採用難なのに間口を狭めるのでは?」と言われそうだが、採用難だからこそ敢えてペルソナを明確にするべきなのではないだろうか。
「多様性・ダイバーシティが推奨されている昨今に逆行している」と言われるかもしれないが、いきなり広義すぎるダイバーシティに取り組むよりも、近い環境の人(今回の例の既婚者・子持ち)たちという狭めた枠組みの中で互いの価値観の違いや多様性を認めていくことから始めた方が良いのではないかと私は考える。
当社の採用におけるペルソナ
この考えに気づいてから、当社では採用募集のペルソナを下記のように定義づけさせて頂いております。
- 既婚者、子持ちの方が働きやすい福利厚生、休暇制度となっております
- 煙草を吸わない方(過去吸っていて禁煙された方はOKです)
- 習慣飲酒者ではない方(接待や知人との会食の場での飲酒は問題ありません)
- ギャンブルをやらない方(過去やっていてやめた方はOK、投資は全く問題ありません)
- 働くことが嫌いではない方(仕事好き、仕事ラブな人大歓迎ですが、労働時間はコンプライアンスしっかり重視)
- 争い事が嫌いで平和主義な方
煙草
タバコを吸う人はタバコ休憩があり、吸わない人はタバコ休憩が無い。結局こういった小さい歪の積み重ねが人間関係を悪化させたり、会社への不満となる。タバコ休憩を禁止にするという選択肢もあるが、そうなると喫煙者にとって居心地の良い会社ではなく、小さな不満が積み重なり仕事や会社が嫌いになる。だったら、最初から喫煙者を雇用しなければ良いというのが当社の考え方。
忘年会の予約ひとつとっても、副社長はお酒が好きで、部長は飲まないから・・・と価値観がの違う人達のお店選びという無理難題を幹事に突きつけることが間違っていて、当社のように日常的に飲酒習慣の無い方だけを採用ターゲットしていれば、会社の会食は「食重視 美味しいものを食べに行く。飲み放題なんて要らない」となる。
仕事が好きな人も、ライフワークバランスを重視する人もどちらも働きやすい会社というのは確かに理想では在るが、現時点で私は無理だと思っている。だったら最初から当社のように「仕事が好きな人」だけをターゲットにすれば良いのではないかと。
ただ、これらもそういう価値観やそれらを重視した人たちが働きやすい会社であることを承知の上で、自分とは異なるがそれでもこの会社で働きたいと覚悟を決めて入社するのは全然違うだろう。
だから、全く受け入れないというのではなく、当社はこういう会社で、こういうことを大切にしていますといのを以下に具体的に落とし込み、明示・発信していくことが求められるのではないだろうか。